決勝戦
プールAで開催国フランスに敗れたニュージーランドは、プールBで南アフリカとのフィジカル・バトルを制したアイルランドに準々決勝で勝ちました。
一方で開幕戦でニュージーランドに勝って勢いのある地元アドバンテージがあるフランスに同じく準々決勝で勝った南アフリカ。
勝ち上がり方としては、悲願の自国開催、自国優勝を狙うフランス、前評判は良くなかったが、特徴を活かしたキック主体のラグビーで意外に強かったラグビーの原産国イングランドを破って来てチームが熟成して来た南アフリカが有利なのかなとも思いました。が、準決勝の相手選手に対しての言動が差別発言との疑いがあり、出場を危ぶまれたディフェンディング・チャンピオン南アフリカのフッカー、ンボナンビ、スクラム、ライン・アウトの要のフッカーが出場停止となり、しかも今大会中にもう一人のフッカー、マルコム・マークスを膝の怪我で欠いていて、控えのフッカーは、本職はバック・ローのフーリーが先発となると、相手の弱いところを突くと言うのが勝負の鉄則、スクラムでプレッシャーを浴びてゲームが一方的になってしまうと心配していましたが、証拠不十分とのことで事なきを得ました。しかし、このおとがめなしが、ワールド・ラグビー内の覇権争いのドロドロしたもので、イングランド出身のビル・ボーモント会長がライバルのニュージーランドの勢力拡大を懸念してのものとも情報がありました。何はさておき、ベスト・メンバーでの世界一を決めるゲームが行われることでほっとしました。
南アフリカ
身体の大きさを活かしたフィジカル・バトルを仕掛けて来る南アフリカ、ボールの争奪で反則を誘い、怪我で離脱したマルコム・マークスに変えて追加招集したスタンド・オフのポラードのキックで得点を重ねる狙い、隙あらばスピードと切れのあるり両翼でトライも取れる陣形。
1 | PR | スティーヴン・キッツォフ |
2 | HO | ボンギ・ンボナンビ |
3 | PR | フランス・マルヘルベ |
4 | LO | エベン・エツベス |
5 | LO | フランコ・モスタート |
6 | FL | シヤ・コリシ |
7 | FL | ピーター ステフ・デュトイ |
8 | NO8 | ドウェイン・フェルミューレン |
9 | SH | ファフ・デクラーク |
10 | SO | ハンドレ・ポラード |
11 | WTB | チェスリン・コルビ |
12 | CTB | ダミアン・デアレンデ |
13 | CTB | ジェシー・クリエル |
14 | WTB | カートリー・アレンセ |
15 | FB | ダミアン・ウィレムセ |
16 | HO/FL | ディオン・フーリー |
17 | PR | オックス・ヌチェ |
18 | PR | トレバー・ニャカネ |
19 | LO | ジャン・クライン |
20 | LO | RG・スナイマン |
21 | FL | クワッガ・スミス |
22 | FL | ヤスパー・ウィセ |
23 | FB | ウィリー・ルルー |
ニュージーランド
アタッキング・ラグビーが持ち味のこれまで世界のラグビーを常に牽引して来たニュージーランド、初戦で地元・開催国のフランスに躓きましたが、フィジカルを再強化して、個々の能力を活かしたアタックにも粘りが出て来て、難攻不落の南アフリカの鉄壁の守りを崩せるのか期待が高まります。
1 | PR | イーサン・デグルート |
2 | HO | コディー・テーラー |
3 | PR | タイレル・ロマックス |
4 | LO | ブロディ・レタリック |
5 | LO | スコット・バレット |
6 | FL | シャノン・フリゼル |
7 | FL | サム・ケイン |
8 | NO8 | アーディー・サヴェア |
9 | SH | アーロン・スミス |
10 | SO | リッチー・モウンガ |
11 | WTB | マーク・テレア |
12 | CTB | ジョーディー・バレット |
13 | CTB | リーコ・イオアネ |
14 | WTB | ウィル・ジョーダン |
15 | FB | ボーデン・バレット |
16 | HO | サミソニ・タウケイアホ |
17 | PR | タマイティ・ウィリアムズ |
18 | PR | ネポ・ラウララ |
19 | LO | サム・ホワイトロック |
20 | FL | ダルトン・パパリイ |
21 | SH | フィンレー・クリスティ |
22 | SO/FB | ダミアン・マッケンジー |
23 | CTB | アントン・レーナートブラウン |
キック・オフ
不適切発言で出場が危ぶまれた南アフリカHOンボナンビが序盤に怪我で退場となってしまいます。しかもラックのボールを守ろうとしたンボナンビの膝に乗ったとことで、イエロー・カードになってしまったニュージーランドのフランカー、フリゼル。南アフリカの本職フッカー不在の心配とニュージーランドのピンチの不安と何とも不可解な判定、ゲームを壊さないで欲しい想いが高まります。レフリー、アシスタント・レフリー、ビデオ・レフリーは全てイングランドときな臭さは気のせいであって欲しい。
30分
スクラムの優位性は、控えのフッカー相手に、数的不利を埋めるため、バックスがフランカーに入ることであまり現れません。数的不利の10分をペナルティ・ゴールの3点だけで抑えたニュージーランド、シンビンが解け、ペナルティ・ゴールで少しずつ加点をして行く30分頃には、今度は何とキャプテンのサム・ケインが危険なタックルでイエロー・カード、しかもアップ・グレードでレッド・カードに。残りの50分を14人で闘うことに。
後半
過去ワールドカップの歴史で決勝戦では、前半勝っていたチームが優勝している。と言うジンクス、しかしラグビーの神様は、ゲームを一方的にはしません。後半早々に今度は南アフリカのキャプテン、シヤ・コリシが危険なタックルでイエロー・カード。後半巻き返しを計るニュージーランドが果敢にアタックします。そしてスタンド・オフのリッチー・モウンガが巧みなステップから相手をかわしてディフェンス・ラインの裏に出るとサポートして来たスクラム・ハーフのアーロン・スミスへパスしてトライ。ようやく逆転かと思われたのですが、またもや不可解なビデオ判定。起点となったライン・アウトのボールの獲得の際にノック・オンじゃないよ。とプレー中に言っていたレフリーが前言撤回する始末。シン・ビン10分間の14人同士の時間が終了してしまいました。
終盤
それでも意地を見せたのは、やはり世界最強と長年言われ続けているニュージーランド、自身のロング・パスからのサポートでラスト・パスを貰ったボーデン・バレットが決勝戦では歴史上一度も許さなかったトライを南アフリカのディフェンス相手に今度は文句無しに取りました。でも何故かそんなに嬉しくありませんでした。また、難癖付けてくるんじゃないかと言う不安があったのでしょうか。ほら、観てみろ、と言う感じでしょうか。
ゴールは外れて1点差、残り20分くらい。流れはニュージーランド。
総力戦
お互いベンチのメンバーを使い切っての総力戦、勝負の行方は、どっちに転ぶのか、まだ判りません。残り10分を切ってから、南アフリカの小さな巨人コルビが故意にボールをはたいたとしてイエロー・カード、この試合4枚目です。(内1枚はレッド・カードにアップ・グレード)
準々決勝でアーロン・スミスに対してイエロー・カードを与えたので、今度も同じだよ。最後に人数を同じにしてあげたから、レッド・カードの恨みは帳消しね。みたいなことはあってはいけません。
申し訳無さから、試合を観れないコルビ、時の経つのは早いもの、9月初旬に始まったワールドカップも残りは数分、しかも、時間が無い、黒いスポーツ・カーのようなアタックに立ちはだかる厚い緑の壁に、時間は費やされて行きます。
最後の望みのアタックは無情にもアーディー・サベアのノック・オンで南アフリカ・ボールのスクラムで万事休す。
ノーサイド
バック・トゥー・バック
史上二回目の連覇を成し遂げた南アフリカ。ディフェンスの勝利です。
数的不利になってからも果敢に攻め続けて1点差まで詰め寄ったニュージーランドはやっぱり凄いですが、それに耐えたディフェンス力に『天晴』です。大統領が観戦に来ていました。しかも表彰台に登壇しているじゃありませんか。国を挙げての応援に、同じラグビー大国でありながら、期待しているもの、背負っているものの大きさに差があったのかなと感じました。
しかし、悔しい。
勝つチャンスはありました。
だけに非常に悔しい決勝戦となりました。
終わりに
ラグビーのレフリーは犯人を捕まえる警察官では無く、オーケストラの指揮者のように、選手と一緒にゲームを創っていく。と何かの記事で読んだことがあり、その通りだと、ずっと信じて来ました。残念ながら、安全面、特に危険なタックルを失くすための対策は、30人のプレーを一人のレフリーで操るのには限界があり、タッチ・ジャッジに判定権限を与えてアシスタント・レフリーにしたり、スポーツ界では一早くビデオ判定を取り入れてビデオ・レフリーを取り入れたものの、その権限が次第に大きくなり過ぎている気がします。レフリーの過ちを正すのは致し方無いのかもしれませんが、人間がやるからこその魅力が失われています。
安全第一ではありますが、レフリング、生意気で偉そうなビデオ・レフリーが、変な覇権争いのためではないことを祈ります。
素晴らしい死闘が1995年南アフリカ大会のような感激的でなかったのは、そんな想いがあったからでしょうか。
大会出場さえ危ぶまれたキャプテンのシヤ・コリシの復帰で見事に連覇した南アフリカは、ニュージーランドであっても、叩き込まれた低いタックルの姿勢を取る時間さえも与えない圧力だったのでしょう。決勝戦の80分間中40分間を数的不利の状態で闘いながらも、トライを許さずに攻め続けたニュージーランドもさすがです。感謝の気持ちが一杯です。