歳を取ると、未来のことよりも過去のことを良く想い出すと言われます。それだけ忘れられない大切な想い出が多いからでしょう。一方で先が短いので、あまり考えなくても良いのだと言う意見もありますが。
ラグビー関係者にしたら、もう三年も経ったのかと、つい昨日のことの様に鮮明に記憶に残っていることがあります。2015年9月19日イングランドの南部にあるブライトンと言う小さな街。
そうラグビー・ワールドカップ2015の日本代表の初戦。スポーツ史上最大の番狂わせ、ハリー・ポッターの作者も書けない結末、桐谷美玲が女子レスリングの吉田沙保里に勝つくらい凄いとも言われた出来事。
実力差
過去七大会全てに出場しているものの、ワールドカップの本大会では僅か1勝しかしていない日本代表は世界ランキング12位。相手は過去の大会で二度の世界チャンピオンになり、優勝候補の一角・世界ランキング3位の強豪・南アフリカ。
世界60億人の人々の中でも、日本代表の勝利を信じていた人はグラウンドにいる15人とベンチの控えメンバーの8人とスタッフの合計40人程。また、英国のブックマーカーの賭けでは日本の勝利は34倍でした。賭けていた人はいましたが勝利を願ってはいただろうけど、信じていたのかは疑問です。
National anthem
ゲーム前の国歌斉唱の表情でプレーヤーの心理が伺えます。結果を知っているからそう見えると言うこともありますが、南アフリカは落ち着いた清々しい表情をしています。ベテランが多く、無難なスタートを切りたいところ。対する日本代表は命をかけて戦う鬼気迫る良い表情です。
先制点
この日のために半年前から、ハードワークで鍛えてきた激しいタックルと直ぐに起き上がって、また起きてタックルをする体力。世界の中でも大男が多く、身体の大きさ・強さを前面に出した戦い方の南アフリカに対して力勝負のスクラムでは負けていません。しつこいくらいのタックルで自分達のプレーが出来ない南アフリカ。先制はこのゲームで一躍有名になった五郎丸のペナルティ・ゴール。
予期せぬ何かが起こって、このままゲームが終わらないかなと思った人が何人いたことか。私なら不謹慎ながら地震が起きるとか、雷が落ちるとかでゲーム終了にならないかと本気で思います。
得意の大型フォワードの力勝負モール攻撃で南アフリカがトライ。ゴール成功。やっぱりかと思いましたが、今までの日本代表と違うのはここから。南アフリカが力自慢のモールならばと、一人ひとりの巧みな技術で組織力を活かした組体操の様な技能賞・芸術点が高そうなモールでお返し、何回かモールでトライを狙ったが阻まれていたので組み方・押し方を工夫して逆転。またしても飛行機が落ちて来てゲームが中止にならないかと願う展開。
更にお返しで南アフリカも力自慢に方向変換の技術も加えてモールを押し込みトライ。逆転し、10-12で前半終了。生放送だと深夜なので、まるで夢のような怒涛の展開。信じられないゲーム展開にほっぺをつねって現実を確認した人もいることでしょう。
後半 開始
夢の続きの後半も先制は日本。攻める日本は五郎丸がペナルティ・ゴールで逆転。キックオフのボールをキックでノータッチにしたが一瞬のスキを付かれてトライをされる。この集中力の高さこそが世界の強豪との力の差なのかと過去幾度も見てきたスキを付かれてしまう。
そして日本は秘密兵器の登場。エディー・ジョーンズ ヘッド・コーチがほれ込んだアマナキ・レレイ・マフィ。前年のゲームで膝に大怪我を負ってしまいワールドカップに間に合うか心配をされたが、必死のリハビリと猛トレーニングにより復帰しました。マフィの突破力で日本の攻撃にアクセントが付いて攻め込み五郎丸の二本のペナルティ・ゴールで同点。
お互いペナルティの3点ずつを加えて、いよいよ一番キツイ、後半の残り20分。マラソンで言うと35km過ぎとも言われています。またもや一瞬のスキを突かれてトライを奪われ7点差で残り18分。まだまだハードワークで鍛えた日本は体力が残っていて、気持ちも切れていません。鮮やかなサイン・プレーで五郎丸がトライを決めてまたもや同点。
攻める南アフリカ、必死のタックルで守る日本。反則で3点奪われ残り8分。3点を追う日本は南アフリカ陣に攻め込み、残り時間も気になる。反則のイエローカードで南アフリカのプロップが一時退場となり15人対14人で人数的優位になる日本。反則を奪うもペナルティ・ゴールの同点では無く、トライを狙い数的優位のスクラムを選択してあくまでも勝利を目指す。
そして80分を過ぎたロス・タイムのペナルティ・キックからボールを展開し劇的な大逆転トライとなります。
歴史に名を刻んだメンバー
です。
➜後半17分17.稲垣啓太(新潟工高➜関東学院大➜パナソニック)
➜後半29分16.木津武士(東海大仰星高➜東海大➜神戸製鋼)
➜後半13分18.山下裕史(都島工高➜京都産業大➜神戸製鋼)
4.トンプソン・ルーク(セントビーズ高➜リンカーン大[NZ]➜近鉄)
7.マイケル・ブロードハースト(キヤンピオン高[NZ]➜リコー)
8.ツイ・ヘンドリック(デラセラ高[NZ]➜帝京大➜サントリー)
➜後半5分20.アマナキ・レレイ・マフィ(花園大➜NTTコム)
10.小野晃征(CB高[NZ]➜福岡サニックス➜サントリー)
12.クレイグ・ウィング(SB高➜NSW大[AUS]➜NTTコム➜神戸製鋼)
13.マレ・サウ(タンガロア高[NZ]➜ヤマハ)
➜後半32分23.カーン・ヘスケス(NB高>O大[NZ]>宗像サニックス)
15.五郎丸歩(佐賀工高>早大>ヤマハ>レッズ>トゥーロン>ヤマハ)
現在は、田村がキャノンへ、日和佐が神戸製鋼へ、木津が日野へ、マレ・サウはトヨタへ移籍、トンプソン・ルークと小野が日本代表から引退。ラグビー・ワールドカップ2019に向けて日本代表の候補には、稲垣、三上、山下、堀江、真壁、リーチ、ツイ、田中、日和佐、田村、山田、松島が現在選ばれています。大野は100キャップには届かないか・・・。(98キャップで日本歴代トップ)
ヘッド・コーチのエディー・ジョーンズはラグビーの母国イングランドのヘッド・コーチ。
一方、プレーヤーは過去の栄光では無く、次のゲームのことで頭が一杯のようです。未来しか見ていないのです。
2019年9月19日
では、親父も先を見てみましょう。2019年の9月19日は、ラグビー・ワールドカップ2019の開幕前日。どんな素晴らしいゲームを観せてくれるのでしょうか? 楽しみです。