世界一退屈なラグビー
世界一退屈なラグビーと称された、ラグビーの母国イングランド。身体の大きいプレーヤーが多く、セット・プレー(スクラム、ライン・アウト)でボールを確実に獲得し、フライ・ハーフ(スタンド・オフ)のキックで陣地を前に進める。
バックスにボールを展開するのは、パス・ミス、ハンドリング・エラーのリスクがあり、外に展開するには、走り回れる味方のサポートがいなければならない。
大きな身体と正確なキックのラグビーは、強いけれどつまらないと言われた時代もありました。
フォワードの前面に出したゴリゴリとした痛いラグビーはボールを手渡しでパスをすることが多いのでバックスのパスよりもミスが起こるリスクは低いです。
上手にスクラム、モールで押し込めるとボールを仲間が身体を張って守っているので、相手に奪われる心配はありません。
南の巨人
そんなプレーを得意とするのが南の巨人、南アフリカ・スプリングボクスです。チームのニックネームのスプリングボクスはアフリカに住む小型のカモシカの仲間。でもカモシカらしからぬゆっくりと体重をかけて圧し掛かるプレー・スタイルです。
大きなオランダ系移民の種族の血を引き、大柄な人たちが多いので、身体の大きさの特徴を活かして力強いパワフルなラグビーを展開します。
プレッシャー
時間と言うプレッシャーは時に正確な判断を誤らせてしまうものです。焦ることによって人は何でもないことが出来ないで、思わぬ失敗を起こしてしまいます。
カウント・ダウンをされることによって精神的に追い詰められ、誤った判断をしてしまい、後悔することも多々あります。
ディフェンスのプレッシャーは、アタックの判断を誤らせて起きたミスにつけ込みボールを獲得するのに役立ちます。
あの世界最強のニュージーランド・オールブラックスを早いディフェンスのプレッシャーによって変幻自在の攻撃を封じ込め勝ち進んだイングランド。
やはり早くて力強いディフェンスのプレッシャーで素早い攻撃で日本中だけでなく世界を熱狂させた日本代表を止めた南アフリカ。
身体の大きさを活かしたパワフルなラグビーと早いディフェンスのプレッシャーからの展開力で勝ち進んだ両チームの争いは、ディフェンス一辺倒のゆっくりとゴリゴリしたゲーム展開を危惧していました。
予想を上回るゲーム展開
そんな予想を覆してくれて、ボールが動くラグビーを魅せてくれました。当然のことですが、ディフェンスに対して相手はアタックをします。
力強いフォワードだけではなく、隙あらばしっかりと外側のウイングまでボールを展開し早いプレッシャーはキックを有効に使うことで、出て来たディフェンス・ラインの裏側をつき攻撃の可能性を広げます。
予想通りのキックで得点を重ねる序盤。決勝まで勝ち上がったチームには当然、良いキッカーがいるので、ペナルティで得た得点チャンスは確実にものにして行きます。相手陣に入ればほぼ射程距離圏内です。
ペナルティ・ゴールは外れても、相手陣でプレーを再開出来る確率が高いので、得点が出来なくても、相手陣に留まれます。
ゴールに届かなかったボールはほとんどの場合、キックで陣地を挽回するのでハーフ・ウェア・ライン近辺でのマイ・ボールのライン・アウトになりますし、ゴール・ラインを越えた場合はドロップ・キックでの再開なので相手陣の10mから22mの間でボールをキャッチしてマイ・ボールのアタックとなります。
見た目以上に南アフリカの前に出るディフェンスのプレッシャーと力強さはイングランドのミスを誘いました。らしからぬパス・ミスが目立ちました。
勝ってな感想ですが、準決勝のニュージーランド・オールブラックス戦で想いを達成しきってしまったかのように、あの時の切れが観られませんでした。逆に言うと、それほどにプレッシャーがあったのでしょう。
黒人初のキャプテンとして優勝のウェブ・エリス・カップを秋篠宮様から授かったシヤ・コリシ Siya Kolisi。歴史に新たな頁を付け加えました。